鉄柵をたたく人
毎日、鉄柵をたたくおばあさんがいる。
爪の音と金属の音が生々しい。
一定のテンポで10回程叩いては終わり、
倍の速さで叩き続けることもある。
エアコンの送風機が止まり静まり返った
夜の空間に響き続ける音....
止まったかと思うとまた
始まる鉄柵の音
爪が痛くなるのか
優しく叩かれたり
激しく叩かれたり
長いこと聞こえなくなったり
さまざまなタイミングとリズム
実は、おばあさんはまるでベビーベッドのように
高い柵でおおわれたベッドに寝ている
看護師さんに怒られる
ほら、また赤くなってきちゃったじない
た・た・か・な・い・の!
お見舞いの家族が来たのも見たことがない
あまりお話しているのを見たことがない
隣のベッドの人とはどうなんだいと言っても、
いない。
もう少ししか、わからないのかもしれない
姥捨小屋のような部屋だ
おばあさんの叩く音が始まる
今日は弱々しい
けれど時期に激しくなるだろう
きっと
きっとだよ
おばあさんは
自分はまだここに居るよ
存在しているよ
って叩いているのかもしれない。
鉄と爪のぶつかる音で
自分はまだ行きているよ
時々無意識に自分という存在を
確かめているのかもしれない。
そして周りに
わたしはまだここに居ますと
叫んでいるのかもしれない。
いやそうに違いない!
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